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    旅する苗


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    先日、育てていた夏向けの苗を、あれやこれやと少しづつだが、茅ヶ崎で農業を営む青年の元へと旅立たせた。

    彼は農家の生まれではない。ごくごくふつうの一般家庭に生まれた。

    幼少期に触れた菜園の面白さから農業高校へ進み、その後、農大へ、そして実践向けの農家が行くような大学校(?)のようなところで、私は彼と知り合った。

    農家の息子が集まる学校の中にあって、非農家出身の彼がこれまで辿ってきた経緯を初めて聞いた時は、正直なところ、全く理解不能だった。作っているのは食い物でも、もっとも食えない仕事の部類である。そんなやつがいるものかと。星を間違えてやしませんかと。よりによってこんな職業に・・・という言葉が口から出かかったけど、初対面だったので危うく引っ込めた。だが、引っ込めておいてよかった。入学後、彼の熱意はすぐにわかったから。

    いつか農家になる時に役立てようと、まわりのクソガキがゲームソフトを買い集める幼少期から、ちびりちびりとお年玉やお小遣いをコツコツとためてきたという話を聞いたときは、胸を焼かれた思いがした。

    農家の子息たちと、「大根は何日に蒔き始めます?」といった会話をしていると、隣にいた彼が、『あぁ、いつか俺もみんなとそんな話がしてみたいなぁ。』と、羨ましそうに言った。農家のなんてことのない『日常』に憧れた青年。

    農家になりたいという人はいる。でもその大半は2~3本頭のネジが抜けていて、自然と戯れたいです(はぁと)なやつだったり、
    ネットに流れたオカシナ電波を拾っちゃったような、なんちゃら農法を掲げて他人を貶めてモノを売る、頭にモンシロチョウが舞っているようなやつだったりする。

    彼は、いつか自分で畑が持てたら、こんな作付にしたいんだと言って、ノートに綿密な未来の作付図をしたためていた。『冬はアブラナ系がどうしても多くなっちゃうからなぁ。大根はいくらか連作がきくとしても・・・、レタスとかはそんなに直売じゃ大面積使えるものでもないし・・・』なんて風に、まだ見ぬ畑を子細に描いては、遠い問題を楽しげに悩んでいたりした。

    いっそのこと、うちの土地を全て彼にあげて、私は彼に雇ってもらえばいいのではないか、なんてことを考えたりもした。彼が農業をしなくて誰がするんだろう。私はやらなくても、彼は絶対やったほうがいいもの。

    そんな彼は、学校を卒業してのち、トマトを作る会社に勤め、彼の地元の有力な農家のもとで研修を受け、25歳の若さで新規就農に至った。でも、彼にとっては随分と長い間夢見てきたことなのだ。一歩一歩を着実に、自分のできるところから少しづつ歩み、夢のスタート地点に立った。その一歩のなんと力強いことか。

    こんな奴は絶滅危惧種扱いか人間国宝か何かに指定して、みんなで守ってあげなければ。これはもはや国益にかかわる問題である。


    でも、そんなことはいらない心配事だった。

    就農初年は、ごくごく限られた小さな面積から始まった。その年の彼は、『もっと面積増やして、いつかは小さいながらもトラクターを買って、トラクターで畑を耕耘するのが、ささやかだけど夢なんだ』と言っていた。 現実面ではとても厳しい状況だったと思うが、愚痴めいたことは言わなかった。畑を仕事にできることが嬉しそうに見えた。

    それから1年が過ぎ、彼の人の好さから貸し手が増え、借りられた畑は総面積で6反近くになるとのこと。これはもう、けっこう遣り甲斐のある広さである。おぃおぃ、そろそろ本当にトラクターが必要じゃねぇか・・・。

    彼は今後どんな夢を描き、叶えてゆくだろうか、とても楽しみにしている。

    私も一歩一歩を着実に歩まねば。

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    芍薬:養生3年目のミセスルーズヴェルト。今年はちょいちょい切り出すか。

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