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    手の内

    同業の知人が当園の野菜を称してこんな言い方をする。

    「おまえんとこの高飛車野菜」、あるいは皮肉気味に「なにせ、おまえんとこの野菜は野菜だもんな」

    はは。結構なことではないか。 最近、そう開き直れるようになった。自分で売り始め3タームが過ぎると図太くなるものである。

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    野菜は身近な存在である。大抵の人が毎日口にする。その一方で、『野菜は味がないもの』と思っている人も、実質的には多い。

    キャベツ1玉100円の大安売り!の名のもとに長蛇の列が出来る。はぁ、これ一体どんなキャベツなんですか…。店員に尋ねてみたところで「100円のキャベツです。」としか返ってこないだろう。列をなす人にどんなキャベツを望んでいるのかと聞いても同様に「100円のキャベツ」なんだろう。

    素材の良し悪しなんてありゃしない。ふわりと柔らかな春系なのか、それとも甘くしっかり巻いた寒玉か、その中間型か。そんなこと全くの無関係である。同じ春系でも金春より金系201、金系201よりも春波の方が好きなんだけど。調味料で味つけしちゃえば一緒じゃないの、ってそりゃ野菜に味がないってのと同じことだ。

    さー安いよ!キュウリの詰め放題だ!ビニール袋がはち切れんばかりに無理やり押し込まれるキュウリさん。農家はキュウリのイボが取れないようにと気を使い収穫するのですよ。(*1)なんとまぁ無残な姿になってしまって・・・。食卓の上のキュウリのやる瀬なさそうな顔が目に浮かぶ。 パンパンに詰まった袋の中には美味しさのかけらも詰まっていない。

    「美味しさの感覚」、埋もれていませんか。

    身近すぎて、いつしか会話のなくなった冷めた夫婦関係を想ってしまうのだけど。

    野菜を食べて、「おいしいと感じられる人」。それは、本当に極少数に思う。

    (*1)そういうわけで、大手種苗会社がイボなしキュウリ品種を開発。猛烈アピールしている。進化というか、もう何が何だかわからん。
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    私が直売を始めるにあたっては、その極少数の人を相手に商売をしようと思った。沢山の人に食べてもらいたい、なんてさらさらに思わない。「限られた人」のためだけであっていい。

    同業者からは結構冷ややかな目で見られた。「客を選ぶなんて偉そうに」

    なんというか、農家には食料を担っているという意識が根強い。
    でも、そんなの50年前の話だ。

    食べ物と生ごみの間に大差は、ない。

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    食べ物を大事にしましょう。教育課程の道中でそんなことをたまに耳にした。幾らか年を取り、見渡してみた日本の食事情。食品廃棄率は世界トップクラスでしたね。いえいえ、別にそれは食品企業さんのことではありません。極ふつーの家庭から出る廃棄量です。期限切れのもの、冷蔵庫の奥底に眠らせて捨ててませんか?

    一粒残せば目がつぶれる、そんな風に尊ばれたお米。今や、そのお米を作る人は労働対価時給200円そこいらに喘いでいますな。フェアトレードが必要なのって途上国だけの話じゃないんですよ。今年の米は猛暑の影響で品質が悪い?ならもっと安くしなさいよ、って、おぃおぃ、米の尊厳どこ行った?

    米も野菜もあってもなくても、どーにでもなっちゃう。パンがなければケーキを食べればいいじゃないの的価値観蔓延。皆揃ってお姫様。そんな人たちを相手にしてたら身が持たないってば。というか、それでみんな辞めて行ってるんじゃないの・・・。

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    そもそもの話が商売なのだ。「売る対象を明確に」なんて当然のことじゃないか。

    栽培の青写真に食卓を描いた。「美味しいね」と、好きな相手や家族と囲んだテーブルで、笑みがこぼれる豊かな時間を想った。野菜は、口にした人が自然とその味わいについて語りたくなるようなものであってほしかった。断じてギューギューに詰められるべきものではない。

    ワインのテイスティングをするように、角度を変えて眺め、鼻孔をいっぱいに広げて香りを味わい、触れたときの質感や手触りを楽しみ、調理する時には高揚を、包丁を入れるときには少しの躊躇いを覚え、口にする時にはドキドキ感が胸に広がってほしい。

    それを、ささやかながら果てない仕事、と思った。

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    販売にあたっては、野菜のすぐ脇に価格を表示することを辞め、一歩引いた位置に黒板書きにしてまとめた。価格の代わりに品種の来歴や調理についての説明書きを添えた。目に価格が映れば人は自ずと比べてしまうもの。突飛な値段を設けているわけではない。それよりも野菜の良さが目に映ってほしかった。一円でも安く?そんな人を相手にしていたら個人の作り手はひとたまりもない。というか、それは農家がすべき仕事ではない。

    取り扱う品目についても同一品目でいくつかの品種を扱うことにした。

    「ホウレン草」という言葉は、その人にとっては単なる記号にすぎない。だが、ホウレン草が東洋種と西洋種とに分かれていたら?どう違うのか?と、疑問を抱くのではないか。その疑問が湧いた時、「味わい」という当たり前のようでいて、忘れがちな琴線に触るのではないか。どうか思い出して欲しい。野菜って豊かなものなんだ。

    直売の販売時間についても1時間半と極短い幅とした。これは直売とは別口で母が配達に行く都合もあるのだが、短い時間にも合わせて通って頂ける人を対象にした時間だ。気軽に立ち寄れる距離感の人、その時間に接点のある生活サイクルの人。時間を長くとって間口を広め、浮動票のようなフリーのお客を相手にするより、深く付き合えるお客がいい。時間を絞ることで、より野菜の好きな人と向き合えると思った。

    そんな方はきっとマメに足を向けてくださる。 採りたての新鮮なものを、新鮮なうちに召し上がって頂ける。野菜は買い置きして冷蔵庫を肥やすものではない。野菜にとっても、お求めになるお客様にとっても、また、それを売る私にとってもベストな時間だ。三方よし。

    それに、足を運んで頂く頻度が高いほど、作り手はお客様の食卓を垣間見ることが出来る。きっとこの方はこの野菜が好きだろう。この方にはこんな食べ方をしてもらいたい、etc。週に一度程度の頻度で足を向けて頂ければ、その時お求めになられた野菜というのはだいたい覚えている。先日お求めいただいた○○はいかがでしたか?そう聞きたい。自分が育てたものなのだ。最後まで知る責任がある。

    そもそも野菜なんて、わざわざ遠くから通ってお求め頂く必要はないのだ。生活のリズムを崩して野菜を求めようとするとどこかに負荷がかかる。野菜か、またはお求めになる人か、作り手にか。

    その人の生活サイクルの中で、すぐに手の届くことが、野菜にとっても、それを売る人にとっても 、またお求めになられる人にとってもベストだ。だから、遠方より足を運んで頂いている方にはこう申し上げることにしている。

    「きっと近くに農業をする人はいるはず。その人を応援してあげて欲しい。」

    美味しかったよ、という一声があれば、農家はもっと美味しく作ろうと励みます。そんな訳でHPにはアクセスはない。

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    何時でも、どこでも、というコンビニエンスな世の流れから遠く離れ、ぽつりとキブンヤ。そんな斜に構えたスタイルをしていると必然とお客はふるいに掛けられ絞られてゆく。実はそんな風に、私は好きなお客だけを選んでいる。

    3年前の始めた当初、極極少ない人を相手にと思っていたけど、いつの間にやら横に広がったよう。美味しさは連鎖するものらしい。それは連なるパールのネックレスよりも幸せに満ちて美しい事だ。

    徹夜でどっさりと仕込んだ(←朝方には半ベソ)直売最終日、最後に会計を済まされたお客様を見送ると何一つ残りませんでした。挨拶がてらと、総出でお越し頂いたよう。ありがとうございました。でも、明日から自分たちの野菜どおする?

    会計待ちで並ばれた、見知らぬ客様同士がお話をされているのが耳に入る。

    「わ、すごい。ネギの買い溜めですね。ここのネギ美味しいですよね。でもそんなに食べるの?」

    「買い溜めというか、このくらいの量だと1週間内位ですぐ使っちゃうんですよ。うち皆ネギ好きなので。」

    「えー!どうやって食べてるの?」

    「あはは。それはですねー、・・・」

    わ。なんだか盛り上がってる様子。


    親身に野菜を語るお客様の姿の向こう側、豊かな食卓の風景を見た気がしました。


    そうそう、私こんな野菜作りがしたかったんだ。

    だから、また作りたい。

    本当に楽しい時間をありがとう。心から感謝。

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